小児医療連載コラム “いざというときにあせらない”こどもの病気とケア
中学生以上の特に女子で原因不明の腹痛を訴えるお子さんは結構多いです。
小児科医が診察して原因がはっきりしない場合は、中央病院勤務時から小児外科医である僕のところに送られてくることがよくありました。
腹痛の原因が稀な外科疾患で生じているのかどうかを調べてもらうためです。
まず症状(いつ、どんなときに痛くなるのか)と腹部所見から、必要に応じて検査を行い、器質的疾患(検査をすると異常が発見される病気)があるかないかを確認します。稀な外科疾患で腹痛が生じていることはほとんどなく、多くの場合は小児外科医が診ても原因不明です。
そういったときの有効な治療薬が漢方薬となります。(ちなみに原因不明の腹痛を機能性胃腸症と呼びます。)
よくあるのが、朝痛くなるけど学校を休むとお昼ごろ痛みが改善する、というパターンです。
年長児の場合、学校が腹痛の原因になっていることがありますが、本人がそれを自覚していないこともあり、話を聞くだけでは原因がわからないこともあります。
休みの日など学校に行かなければ腹痛が生じないのであれば、学校が原因なのかなと考えますが、多くの場合は「学校に行きたいのだけれどお腹が痛くていけない」という訴えです。
こういった腹痛の場合に最初に使う漢方薬が小建中湯です。以前からよく使っている薬で、よく効きます。他の不定愁訴(頭痛、倦怠感など)も改善してしまうこともあります。
開業してからは様々な漢方薬が使えるようになり、心下痞硬(みぞおちの圧痛)と腹鳴、下痢には半夏瀉心湯、胸脇苦満(季肋部の圧痛)があり、おなかが緊張している場合は四逆散、臍上悸(腹部を触診すると大動脈の拍動を触れる)がある場合は安中散、おなかが緊張していなければ柴胡桂枝湯など、腹部所見から漢方薬を決めることも多くなりました。
お子さんの腹痛でお困りの場合は、いつでもご相談ください。
医療法人社団育心会
やまだこどもクリニック
院長 山田慎一
https://www.yamadakodomo-clinic.com/
※2020年12月11日掲載
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。
第38回 医者の役割
医者の役割
第37回 漢方薬あれこれ
第36回 腹痛の漢方